STORY
- あらすじ
- 1話〜10話
- 11話〜20話
- 21話〜30話
- 31話〜最終話
景和(けいわ)20年、国交を回復した北宣(ほくせん)国と汐月(せきげつ)国は、和平の印として婚姻を結ぶことに。汐月の公主・李明月(り・めいげつ)こと愛麦拉(アイマラ)は、兄の凱爾比(カイルビ)に護衛されて北宣の都へと入るが、その一行は黒ずくめの刺客に襲われてしまう。だが、この結婚に乗り気ではない明月は密かに列を離れ、お忍びで都見物を満喫中。運よく難を逃れたのだった。そんな騒動の最中、明月は一行を狙った賊を追跡する若者の姿を目にし、思わず後を追う。「あなたの名前は?」――明月の言葉に足を止めたその若者は、涼しげに一瞥をくれただけで、名乗ることなく立ち去り…。
第1話
景和20年。国交を回復した北宣国と汐月国は、両国の友好のため婚姻を結ぶことに。兄・凱爾比(カイルビ)に護衛されて北宣の都へと入った汐月国の公主・李明月(り・めいげつ)こと愛麦拉(アイマラ)は、ひとりお忍びで都見物を満喫するのだった。そんななか、汐月の一行が襲撃されたとの情報が。急いで駆け付けた明月が目にしたのは、襲撃者と思われる賊を追跡する白い衣を身にまとう若者の姿。彼女は思わずそのあとを追いかけ…。
第2話
政略結婚の相手である資(し)王・李謙(り・けん)の冷たい態度に怒り心頭の李明月(り・めいげつ)。嫁ぐのをやめて汐月国に帰ると騒ぐも、この北宣で李謙の王妃となるのがお前にとって最善だと凱爾比(カイルビ)に諭される。自分に残された道はここで耐え忍ぶことだけなのかと嘆く明月に、凱爾比はある物を差し出した。それは祝心鈴――汐月の秘技である催眠術の効果を高める宝器である。これで、李謙を意のままに操れると喜んだ明月は…。
第3話
9歳の時に患った大病のせいで、李謙(り・けん)はそれ以前の記憶を失っていた。ところが李明月(り・めいげつ)の催眠術によって見た幻であるはずの光景に見覚えがあったばかりか、自分が火を恐れる理由が判明し、李謙の心は乱れる。もし明月の術で記憶が取り戻せるなら、彼女を手元に留め、全力で守ろう――そう決心した李謙は、自分の同意なしに術をかけるのを禁じたうえで婚姻に同意すると明月に言い渡し…。
第4話
異母兄の李詢(り・しゅん)に一服盛られたことで両腕に力が入らなくなった李謙(り・けん)は、婚礼の大事な儀式の1つである弓射を行うことが難しい状態に陥っていた。それぞれ、夫婦円満・子孫繁栄・国の隆盛を表す3本の矢を射損なうという失態を犯せば大問題になる。しかし、李謙のただならぬ様子に異変を悟った明月が、すぐさま“夫婦で共に矢を放つ”ことを進言。彼女の機転により儀式は無事に終わり、事なきを得るのだった…。
第5話
燃えさかる炎に包まれた建物を前にした自分の耳に飛び込んできた、“逃げるんだ”という叫び声。恐ろしい夢から覚めた李謙(り・けん)が、ふと横を見ると、そこには静かな寝息を立てる李明月(り・めいげつ)が。一体なぜ自分は明月の寝床にいるのか――そればかりか、手までつないでいる!? バレる前に一刻も早くこの場を立ち去ろうとした李謙だったが、途中で物音に気づき目を覚ました明月が“曲者”と騒ぎ始めてしまい…。
第6話
侍女を伴い市へとやってきた喬慧心(きょう・けいしん)は、そこで提灯を手に取った。その昔、自分と李謙(り・けん)の縁を結んだ提灯で、今度は切れかけている縁をつなぎとめたいと考えたのだ。ひたすら待ち続け、日も暮れかかり始める頃、ようやく出先から戻ってきた李謙に、提灯を手渡しながら想いを告げる慧心。しかし、彼女の心が李謙に届くことはなかった。一方、命じられた写経をさぼっていた李明月(り・めいげつ)は…。
第7話
申の刻に白雲山の栖鶴軒で待つ――康楽(こうらく)公主からの文を受け取った李明月(り・めいげつ)は、今は出歩かないほうがいいという侍女・坦麗(タンリー)の忠告も聞かずに、1人で出かけてしまう。ところがそれは、明月をはめるための罠。企みに気づいた坦麗から事情を聞いた李謙(り・けん)は、すぐさま馬を走らせ明月の救出に向かうのだった。そんなこととは露知らず白雲山へとやって来た明月を待ち受けていたのは…。
第8話
額の傷につける薬をもらうためと称し、李明月(り・めいげつ)は李謙(り・けん)の部屋へ。だが彼女の真の目的は、李謙を催眠術にかけること。“えんじ色の衣を着た女子が現れたら一緒に市へ行こうと誘うの”――術を施すことに成功した明月は、ほくそ笑んでその場を立ち去るのだった。翌日、支度に手間取りながらも李謙のもとへと向かった彼女は愕然とする。そこには、自分と同じえんじ色の衣を着た喬慧心(きょう・けいしん)が…。
第9話
李謙(り・けん)から狩りへの同行を言い渡された李明月(り・めいげつ)は、自分の騎射の腕前を披露できると喜び、お宝である狩猟具を得意げに見せた。ところが李謙は、それを没収するよう第五澄(だいごちょう)に命じたばかりか、汐月国の装いをすることも認めないと告げたのだ。あまりの理不尽さに怒りを募らせる明月。だが李謙の真意は、明月を李詢(り・しゅん)の罠から守り、陛下からいらぬ疑念を持たれぬようにするところにあり…。
第10話
李詢(り・しゅん)が放った刺客は、李明月(り・めいげつ)にケガを負わせはしたものの、李謙(り・けん)が助けに入ったせいで命を奪うことはできなかった。翌日、思いがけない事態が李詢を待っていた。李謙は明月が襲われたことを陛下へ報告しないばかりか、彼女に護衛をつけようともしないのだ。何か魂胆があるのだと考え、二度目の襲撃を中止するよう配下に命じる李詢。しかし、そのやり取りを密かに見ている者が…。
第11話
李謙(り・けん)が、自分のことを“単なる手駒にすぎない”と語るのを耳にした李明月(り・めいげつ)は、傷ついた心を紛らわすかのように、康楽(こうらく)公主の部屋で大酒を飲んで泥酔。しばらくして迎えにきた李謙に“顔も見たくない”と言い捨てる。その言葉に僅かに眉を顰めた李謙だったが、帰るのを拒む明月を問答無用で抱きかかえると、その場を後にするのだった。すると、王府に帰る馬車の中で予想もしない出来事が…。
第12話
李謙(り・けん)が風呂で汗を流していると、そこへ先ほど決闘した相手である僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)が。今は遠慮するよう促す第五澄(だいごちょう)を無視して平然と湯船の中へ入ってきた雲伺は、“剣の腕前は私より上だが、体つきは貧弱だ”と言い放ち、ただでさえ李明月(り・めいげつ)への馴れ馴れしい態度に腹を立てている李謙の神経を逆なでするのだった。そんな2人の男の湯浴みを簾の向こうでのぞき見していた明月は…。
第13話
兄・凱爾比(カイルビ)や僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)との散策を邪魔されたり、冷淡な扱いを受けたり――李明月(り・めいげつ)は、李謙(り・けん)からの度重なる嫌がらせに腹を立てていた。ところがその晩、李謙は市場でケガをさせたことを“悪かった”と詫びてきたばかりか、過去に負った矢傷まで労わる様子を見せるではないか。普段の傲慢さとは打って変わって、素直でしおらしい李謙の急な変化に動揺する明月だったが…。
第14話
凱爾比(カイルビ)は催眠術を使い、李明月(り・めいげつ)の中から僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)への愛や2人の思い出をすべて消し去った。凱爾比に激しい怒りをぶつける雲伺。後ろめたさを感じながらも凱爾比は、ここで波風を立てて北宣と汐月の仲を裂けば、罪人として罰せられると訴えるのだった。しかし、雲伺は怯むそぶりも見せず、凱爾比に短刀を突きつけて告げた。たとえ死罪になろうとも明月の記憶を取り戻す、と…。
第15話
李明月(り・めいげつ)が婚姻により悲しむことがないように、僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)と愛し合った記憶を消したと凱爾比(カイルビ)は言う。しかし李謙(り・けん)は、明月の幸せのためにも催眠術の解き方を教えてほしいと訴える。そして、過去を知ってもすべて受け入れるし、もし記憶が戻り、この婚姻が解消になったとしても、北宣と汐月の関係は守ると断言するのだった。李謙の誠意と覚悟を見た凱爾比は、彼にある物を手渡し…。
第16話
琴師・李季蘭(り・きらん)が奏でる美しい琴の音とともに、僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)へ手作りの菓子を贈ったことや、3本の矢を同時に射る技を教えてもらったこと、永遠の愛を誓い合った過去が次々に蘇ってくる。すべてを思い出した李明月(り・めいげつ)の心は、李謙と雲伺の間で複雑に揺れ動き、まるで我が身が引き裂かれるようだった。苦悩する明月に、季蘭は問う。今、あなたの目に浮かぶ人は誰かと…。
第17話
元宵節の日、李謙(り・けん)に約束をすっぽかされて傷ついた李明月(り・めいげつ)。翌朝、昨夜は忙しかったのかと尋ねると、“床に入るのが早かっただけだ”とすげない返事が。自分が送った手紙を読んだのに、約束の場所に来てくれなかった――悲しい現実に心がえぐられ、明月は目に涙をためながら、汐月へ帰国することを告げるのだった。しかし、全ては誤解だった。李謙は明月の手紙の言葉を、別れの意味だと受け取っており…。
第18話
汐月への帰路。休息のために立ち寄った場所で1人きりになった李明月(り・めいげつ)は、馬の蹄の音を耳にして、思わず振り返った。するとそこには、李謙(り・けん)の姿が。司空真(しくう・しん)のおかげで明月の本当の想いを知った彼は、彼女を引き留めるべく駆け付けたのだ。すぐさま明月を抱き寄せ、間に合ったことに安堵しながら“行くな”と訴える李謙。傷ついた気持ちを抱えていた明月は、こらえきれず…。
第19話
衆目の中で李謙(り・けん)から婚姻を拒まれたことに悄然とする喬慧心(きょう・けいしん)。娘の幸せを願いながらも没落した喬家再興を目指す父・喬玄(きょう・げん)は、李謙への未練をにじませる慧心に、早く現実を受け入れるよう忠告するのだった。一方、李謙は近頃、李明月(り・めいげつ)に避けられているような気がして、どうにも納得がいかない。そんな彼に宋金玉(そう・きんぎょく)は、夫婦の契りを結べばいいのだと助言し…。
第20話
賊軍の首領は喬(きょう)家の家職・喬崢(きょう・そう)であり、主の喬玄(きょう・げん)は関与していない。李謙(り・けん)は陛下にそう報告したが、それは喬玄への――ひいては彼の娘である慧心(けいしん)への情けからついた嘘だった。これにより、喬玄が李家の敵である前王朝の末裔で、逆臣であるという事実は伏せられたままとなる。だが、李謙が父親を殺したと思い込んでいる慧心は、彼への憎しみを募らせ…。
第21話
李謙(り・けん)は、大事にしていた扇子をダメにされてカッとなり、李明月(り・めいげつ)を責めた。頭ごなしに怒られた明月も黙っていられず、2人は言い争いになってしまう。その夜、腹の虫が収まらない明月は、部屋を片づけろという李謙の言いつけに反発し、わざと散らかす始末。育った環境や習慣の違いで何かとぶつかる李謙と明月は、ある取り決めをする。それは、日替わりで互いに“主人と従者”になるというもので…。
第22話
「将進酒」の詩を李明月(り・めいげつ)に暗記させようとする李謙(り・けん)。明月はそれが嫌で李謙の記憶を消そうと催眠術をかけるが、なぜか彼は実母・鄭(てい)妃の姿を思い出した。香りまで感じるかと思うほど鮮明な記憶の中の母は、側仕えの太監が言うように重い病を患って亡くなったとは思えないほど生気に満ちていた。何かおかしい――李謙に協力し鄭妃の死因を調べ始めた明月だったが、ある日突然、陛下に呼び出され…。
第23話
掖庭にやってきた李謙(り・けん)と李明月(り・めいげつ)。そこには鄭(てい)妃に仕えた者で唯一の生き残りである鄧(とう)ばあやがいると、太監の1人が密かに教えてくれたのだ。鄧ばあや曰く、鄭妃は懐妊した斉(せい)妃を殺した罪を着せられ永泰庵に幽閉されたが、その後すぐに永泰庵で起こった火事により亡くなったのだという。火事の原因は花火――それを聞いた李謙は、催眠術にかかった時に見た光景を思い出し…。
第24話
なんという失態だ――青州の民を飢餓から救うための食糧を盗賊から守れなかった李謙(り・けん)を、陛下は責め立てた。それを横目で見ながら、この騒動を企んだ李詢(り・しゅん)は、してやったとばかりにほくそ笑む。ところが、事は李詢の思うとおりにいかなかった。李謙はこの非常事態を見事な手腕で早々に解決したのだ。悔しさと同時に、“強奪の黒幕は判明していない”という李謙の言葉に李詢は動揺し…。
第25話
李謙(り・けん)が側妃の裴姝棠(はい・しゅとう)を寵愛し、自分を蔑ろにすることに怒り心頭の李明月(り・めいげつ)。そこには思いもよらぬ理由が。実は、姝棠は李詢(り・しゅん)の命令で資王府に送り込まれた間者だったが、想い人の柏賞(はく・しょう)と添い遂げさせるのを条件に李謙と手を組み、李詢を欺くための芝居を打っているのだという。李謙が姝棠に心変わりしたわけではないことに安堵する明月だったが…。
第26話
月老殿に何者かが爆薬を仕掛けたとの知らせに、雀落節当日にここへ集った皇室の者を狙ったのではないかと一同は騒然となる。そこへ、挙動不審との理由で捕らえられた司事が連れてこられ、皇帝の命により尋問が始まった。司事曰く、ここ数日で月老殿に出入りしたのは李明月(り・めいげつ)だけで、彼女は何かを隠した様子だったという。さらには明月の侍女・芙児(ふじ)までが、明月に頼まれて火薬を購入したと自白し…。
第27話
行方が分からなくなった李明月(り・めいげつ)を捜して酒楼に入った李謙(り・けん)は、僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)と出くわした。怒りをにじませながら明月の居場所を問い詰める李謙。すると雲伺は、明月ならすでに資王府へ帰したと言うではないか。だが、いまだ明月を諦めていない様子を見て取った李謙は、“よからぬ考えを起こすなら、とことん追い詰める”と言い残し、資王府へ戻ってみると…。
第28話
わずかな兵だけを供に、李謙(り・けん)は汐月国へ向かうことに。目的は僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)と和議を結ぶためである。不測の事態に備えて、衣だ薬だと旅支度に勤しむ李明月(り・めいげつ)だったが、雲伺が李謙を敵視しているのは明白。李謙の身に危険が及ぶのではないかという不安はぬぐい切れなかった。こんな事態に陥ったのはすべて自分のせいだと涙を流す明月に、李謙は優しく口づけし…。
第29話
仲間の助けを借りて、軟禁されていた掖庭から抜け出した李明月(り・めいげつ)は、司空真(しくう・しん)と共に李謙(り・けん)の救出へと向かう。しかし、明月の捕縛を命じられた兵たちが迫ってくる。真は明月を逃がすため、己の身を挺して追手を足止めするのだった。同じ頃、皇帝の命で李謙の救出に向かおうとする李詢(り・しゅん)に、喬慧心(きょう・けいしん)は同行を申し出た。その目的は李謙を葬り去ることで…。
第30話
今夜、僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)と李明月(り・めいげつ)の婚儀が行われるという。報告を受けた李詢(り・しゅん)と喬慧心(きょう・けいしん)は、その隙を突いて軍営にいる者たちを一網打尽にすべく手筈を整える。一方、雲伺への輿入れ準備で軍営にいる明月は、李謙(り・けん)を助けにきたはずが、監禁されて逆に助けを求める立場になった自分を恥じていた。李謙にバレたらまた笑われるわ――そう嘆いた瞬間…。
第31話
李謙(り・けん)は殺された――李詢(り・しゅん)の言葉に、激しく動揺する喬慧心(きょう・けいしん)。つらいのは自分の手で仇を討てなかったことだと言いがらも、その目からは涙が溢れる。慧心の受けた衝撃は大きく、恨みは忘れて昔のように笑ってほしいと望む李詢の言葉も、彼女の心には届かなかった。その頃、僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)の墓前で目を覚ました李謙は、李明月(り・めいげつ)の姿がないことに気づき…。
第32話
僕固雲伺(ボクトゥ・ユンスー)に“殺された”李謙(り・けん)と李明月(り・めいげつ)は身分を捨て、山奥にある粗末な宿に身を寄せていた。初めて2人だけで過ごす幸せな時間――しかし、それも長くは続かなかった。配下を引き連れた李詢(り・しゅん)と喬慧心(きょう・けいしん)が、彼らを捜しに来たのである。急いで宿の隠し部屋に逃げ込み息を潜める李謙たちだったが、そこで思いもよらぬ事実を耳にして…。
第33話
あなたの何がそんなに特別なの?――自分より容姿も教養も劣る李明月(り・めいげつ)を選んだ李謙(り・けん)が許せない喬慧心(きょう・けいしん)。そんな彼女の嫉妬心を煽るかのように挑戦的な物言いをする明月に我慢ならず、慧心は配下に見張りを命じて、その場を離れた。すると彼女と入れ替わるように李詢(り・しゅん)が。“私は追い詰められた”と叫ぶ李詢の真意探ろうと、明月は隙を見て彼に催眠術をかけるのだが…。
第34話
その手で李明月(り・めいげつ)を殺すか、2人で死ぬか――喬慧心(きょう・けいしん)から決断を迫られた李謙(り・けん)は、迷うことなく愛する明月と共に逝く道を選んだ。来世でまた一緒になろうと誓い合う李謙と明月。だが、慧心が本当に殺したいのは自分だと分かっている明月は、密かに覚悟を決めていた。私がそばにいるから大丈夫だと李謙が明月を抱きしめた次の瞬間、彼女は李謙に催眠術をかける。“私を殺して”と…。
第35話
李明月(り・めいげつ)の意識が戻らないなか、皇帝に召し出された李謙(り・けん)。李詢(り・しゅん)を失い意気消沈する皇帝は、長きにわたって李謙と彼の母である鄭(てい)妃を誤解していたことを詫びたうえで、我が子に先立たれて憔悴する淑(しゅく)妃に会いに行くよう促すのだった。育ててもらった恩があるとはいえ、母の命を奪った張本人である淑妃のもとに行かせるのはなぜか。理由を尋ねる李謙に皇帝は…。
第36話
「ここにずっといましょう」。夢の中の李明月(り・めいげつ)は、李謙(り・けん)を見つめて言った。だが、どんなに居心地がよくとも、ここは自分たちのいるべき場所ではない。李謙は彼女の手を握りながら、世が栄えて富に満ちようと望むのは明月のことだけで、目を覚ますのをどれだけ待ち焦がれているかを話して聞かせるのだった。たった独りで、どう余生を過ごせというのか――明月を抱き寄せ口づけする李謙。彼の強い想いに明月は…。